【代表理事・池上正樹】一般社団法人SHIPひきこもりと共生社会を考えるネットワーク設立の思い
長年、ひきこもり関係の取材をしてきた。
それは、見えなかったものや、見えていたのになかったことにされてきた思い、大事にしてきた気持ち、それぞれの生きてきた軌跡に、1つ1つ光を当てる作業だった。
13年前、ひきこもりフューチャーセッション「庵 -IORI-」という対話の場を仲間たちとつくった。当時は、ひきこもり界隈においても、上下関係や序列、勝ち負けが支配し、社会に戻ろうと迫られても、声を出せなくさせる関係性がそこにあった。他人と同じことができなくても、失敗したことがあったとしても、みんなひとりの人間。フラットな関係をつくりたかった。
大事にしてきたのは、ファシリテーターも参加者も、お互いに成長し合える場。そんな庵には毎回、100人以上の参加者が全国から集まった。その6~7割は当事者だった。庵は10年で幕を閉じ、役割を終えた。
でも、対話交流の芽は確実に広がっている。誰かとどこかで出会えることで、人は輝く。ひとりじゃない。それでいいと、誰かが後押ししてくれるだけで、安心する人たちを数多く見てきた。
これからは、本当の自分でいい。どんなに違う意見や価値観も尊重し合える。そんな対話が当たり前の社会をつくりたい。自分のストレングスを活かして発信できるメディアを新しく立ち上げ、皆で未来を変えたいと思った。
私は、弟が当事者だったことから、KHJ兄弟姉妹支部の支部長も務める。
周囲から「きょうだいなんだから」と負担を強いられ、プレッシャーにさらされる兄弟姉妹の悩みや葛藤も、これまで相談窓口や受け皿がなく、見えないことにされてきた。
こうした兄弟姉妹の人たちにも、SHIPに関わってほしいと願っている。
一般社団法人SHIPひきこもりと共生社会を考えるネットワーク代表理事
季刊「SHIP!」発行人
池上 正樹